暑い日の冷房は、もはや生活必需品。しかし、その恩恵を受ける一方で、無意識のうちに体のバランスを崩しているかも。キンキンに冷えた部屋に長時間いれば、体は内側から冷え切ってしまいます。特に、足元や首元、お腹周りが冷えると、末梢血管が収縮し、血流が悪くなります。血液は酸素や栄養素を全身に運び、老廃物を回収する重要な役割を担っています。血流が悪くなると、脳や耳、その他の臓器への血液供給が滞り、めまいや耳鳴りの原因となることがあります。

また、暑い屋外から冷房の効いた室内へ移動すれば、体は瞬時に大きな温度変化にさらされます。この急激な温度差が、体温調節を司る自律神経にとって大きな負担に。自律神経は、交感神経と副交感神経の二つの神経から成り立っており、それぞれがアクセルとブレーキのように働き、体の様々な機能をコントロールしています。頻繁な温度変化は、これらの神経の切り替えをスムーズに行えなくさせ、自律神経のバランスを崩してしまいます。その結果、めまい、立ちくらみ、倦怠感、頭痛、不眠など、多岐にわたる不調を引き起こしてしまうのです。いわゆる「クーラー病」の典型的な症状とも言えます。

暑い夜は寝苦しく、睡眠の質が低下しがちです。そして、この睡眠不足こそが、めまいや耳鳴りを悪化させる大きな要因となります。深い眠りであるノンレム睡眠中に副交感神経が優位になることで、心身がリラックスし、日中に緊張した神経が休まります。しかし、寝苦しさからくる睡眠不足は、副交感神経の働きを低下させ、日中の活動で高まった交感神経が優位な状態が続いてしまいます。これにより、常に体が緊張状態にあり、血管が収縮しやすくなるため、血流が悪化します。

さらに慢性的な睡眠不足は、血圧の上昇や心拍数の増加など、循環器系への負担を増大させます。十分な睡眠が取れないと、体は疲労回復に専念できず、血管の修復や再生も滞りがちになります。その結果、血液がドロドロになりやすくなったり、血管が硬くなったりするなど、血流悪化につながる様々な問題が生じます。脳や耳への血流が悪くなると、脳が酸素不足に陥ったり、平衡感覚を司る三半規管や蝸牛への血流が滞ったりすることで、めまいや耳鳴りといった症状が顕著になることがあります。

大量の汗をかき、水分や塩分の補給が追いつかないと、脱水症状が起こりやすくなります。体が水分不足に陥っていると、血液の粘度が高まり、酸素が脳に届きにくくなるため、めまいや頭重感がより強く感じられるようになります。また、時には筋肉痛などの症状が現れることもあります。さらに、食欲不振や冷たいものを摂りすぎてしまい、胃腸の働きが低下することが原因で夏バテ状態になると、全身の血流や代謝が悪化しやすくなります。

めまいや耳鳴りは、様々な原因で起こりますが、その多くは「血流」が深く関わっています。